コロナ禍で頻発する「買い占め」の実態に迫る

新型コロナウイルス関連

コロナウイルスの発生に伴い、マスクの需要が一気に高まり、街中に「マスク品切れ」の文字が飛び交うようになってから2ヶ月ほど経過しました。マスクだけではなく、飲食店やオフィスなどで必要となるアルコール消毒液も枯渇気味となり、一時的ではありますがトイレットペーパーも買い溜めのために多くの人の行列があったと報道されました。非常時に我々がよく耳にする「買い占め」という現象。その実態に迫りながら、一人一人が取るべき姿勢についても触れていきたいと思います。

買い占めの歴史

買い占め現象はもちろん今回が初めてではなく、過去に何度も見られた現象です。1918年に富山の主婦らが発起人となり起こった米騒動はその一つです。政府が決定したシベリア出兵に対し、米の需要が高まるのではとにらんだ多くの商人が米を買い占め、米の価格が一気に高騰したことが暴動発生の一因と言われています。

1973年のオイルショックの際には、中東からの石油の輸出制限により石油の値段が高騰しました。政府による資源節約の要請がある一方、一部の企業による原材料の買い占めや売り惜しみ、また便乗値上げが相次いで発生しました。「狂乱物価」といわれるほどの物価の上昇に国民の間ではパニックが発生し、トイレットペーパー、洗剤、砂糖などを求めて多くの客がスーパーマーケットに殺到しました。

2011年に発生した3.11の大地震の際にも同様の買い占め現象が起こりました。スーパーマーケットやコンビニなどからは乾電池やティッシュペーパーなどの日用品に加え、水や缶詰などの食料品が消えたのは記憶に新しいと思います。この際には、被災地に送るための買い溜めや流通の混乱など諸要因が挙げられていますが、政府が「買い溜めを控えるように」と声明を出すまでの社会問題となりました。

なぜ人は買い占めたくなるのか?

では、買い占めなくてもいいとわかっているにもかかわらず、なぜ我々は「買い占め行動」に走ってしまうのでしょうか。当然要因は一つに絞ることはできませんが、その要因になりうるものを様々な視点から切り込んでみたいと思います。

まず、今回のコロナウイルスの件に限って言えば、収束がいつになるのかが誰にも分からないという不確実性に問題の本質があります。将来どうなるのかが誰にも分からないことにより、とりあえず他人よりも多く手に入れよう、他人よりもいい生活環境にしようという欲求が生まれたのだと考えられます。「私、家に○○枚もマスクがあるのよ。すごいでしょう」などと、コロナウイルスに感染しないことよりも所有するマスクが多いことに価値を見出すような感覚を知らず知らずのうちに多くの人が抱いてしまったのです。

また、連日のマスク品切れのニュースの中で、周囲の人々が行列に並んでマスクを手に入れようとする様子をテレビなどのメディアを通して頻繁に目にしたと思います。また、みなさんの近くでも実際に行列に並んだ方がいるかもしれません。自分以外の多くの人間とともに社会生活を送る我々にとって、集団心理というものを避けては通れません。「周りはみんな買っているから私も買って安心したい」や「みんな並んでいるから並ぶのが正しいのだろう」という心理的なプレッシャーは誰しもが少なからず感じているものです。

そして、人間とは不思議な物で、そこまで必要と感じなかったものでも、急に「無い」と言われると欲しくなってしまうのです。これは心理的リアクタンスといい、自由を制限されるとますます自由に執着するという人間の心理的性質に関係しています。十分に足りる量だとしても、一度スーパーマーケットなどで品切れを経験することで本来の価値以上の値打ちを幻想的に抱いてしまうのです。

買い占めを防止するには

買い占めが起きないようにするための方法や実際に起きた時にどう行動すべきかは、単に個人だけの問題ではありません。政府や一般のお店などとも協力しながら対策を練る必要があります。

マスクの問題については、個人で使用するだけでなく転売を通して利益を得る集団が現れたことはニュースでも報じられたと思います。ドラッグストアなどで定価で売られていた物が一般のネット通販などで高値で販売されており、欲しい人のもとに届かないという現状が発生しました。政府は、サイトを通したマスクの転売を法的に規制するなど、監視体制を強化することで悪質な転売行為を減少させようと試みました。

お店なども知恵を出し合い対策を取っています。これまで事前にマスクの販売をアナウンスし希望者が列をなして購入するという光景が一般的でしたが、列に並ぶ中で罹患リスクが高まることを指摘されてからは、意図的にマスクの販売タイミングをアナウンスせずゲリラ的に販売することで客の密集を避けるような方法に転換していきました。

個人レベルで取れる対策もあります。まず心がけることは、正しい情報を入手することです。今ではネットやSNSを通して大量の情報を簡単に手に入れることができます。ここで気をつけるべきことは、一箇所の情報だけに依存しないことです。複数の情報源にアクセスし、情報の確からしさを見極めることを怠らないでください。また、誰が発信しているのかも見逃してはいけません。同じ情報だとしても、信用のおける報道機関が発したものか、それとも見知らぬ個人が憶測を呟いたものなのかで情報の価値は大きく変化します。

また、その買い占めが本当に必要なのかを普段の生活を思い出すことで冷静に見つめ直してみましょう。例えば、乳児用のオムツがなくなりそうという噂を耳にしたとして、今買おうとしている量が何日分に相当するのかを計算してみてください。もちろん本当に必要な量を買おうとしている場合もあるでしょうが、買い溜めの噂でスーパーマーケットなどに駆け込んだ場合、だいたいは明らかに必要のない量を買い込もうとしているものです。

いかがでしたか。コロナウイルスの影響はまだまだ収まりそうにありませんが、疑わしい情報などにも簡単には動じず、こういう時だからこそ他人を思いやりながら行動することを意識したいものです。

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